私が独立を意識するようになったのは、35歳前後でした。スタッフが働きやすく、しっかり稼げる店を作りたい。それがこの店を作った動機です。美容師というのは職人の世界で、若い間は給料が安く帰りも遅い。だからみんな店をやめて独立するけれど、実際には集客に苦戦したり、毎月の広告費に頭を悩ませたりしているケースが多いようです。そんな美容業界の現状を見て、何かが違う、何とかしたい、と思うようになりました。
美容師というのは職業柄、お客様が憧がれるようなセンスや魅力が無くてはなりません。そのためには服を買ったり、旅行へ行ったり、美味しいものを食べたりする、たくさんの自己投資が必要です。だから私は、売上をできるだけ多くスタッフに還元して、魅力的なスタッフを育てたいと思っています。
しかし、私の場合は店を出してすぐに、自分の弱点が見えました。それは数字に弱いということです。店を存続するためには、売上をどこまで還元しても大丈夫なのか。経費として、店のインテリアにかけられる予算はいくらまでか。まったく見当もつきませんでしたが、店のお客様でもある中山会計の藤村さんにオープン当初から相談できたおかげで、非常に助かりました。分からない事を何でも聞きながら、10年後、20年後に自分がいなくても店が回るような仕組みを、しっかりと築きたいと思っています。
私が美容師として心がけていることは、お客様の「思い」を聞くことです。髪に対してどんな悩みを抱えているのか、どういう自分になりたいか。その思いを叶えることが私の仕事だと思っています。どこのサロンでもベーシックカットが基本になっていますが、日本人の髪をコントロールするためには、わざと基本から外れた技術を加えることも効果的です。型にはまった切り方をするのではなく、お客様の思いを叶えられる方法を、いつでも全力で考えています。
この店は基本的に、広告を出さない方針です。新規客の獲得に広告費をかけるより、お客様の満足度を高めてリピート客を増やすことで、お客様やスタッフに利益を還元したいと思っています。周期はできるだけ長く。目先の利益だけに振り回されず、長く通って下さるお客様を獲得したいと思います。