先日、お客様の決算報告会に同席した際、
金融機関から社長様にいろいろとご質問をされました。
この社長様とは普段から財務状況や資金繰り状況を共有していましたので、
スムーズにお答えされましたが、
金融機関とこうした円滑なやりとりができない経営者様も多いのが実際のところです。
金融機関が損益計算書を見て、特に目に付くのは数字が悪化しているところです。
売上が下がった、売上高総利益率が下がった、経常利益が赤字になった、など。
なぜ悪化したのか理由をしっかり把握しておくとともに、
どう改善していくかの対策も答えられるようにしていただければベストです。
そこで、弊社がお客様の決算報告会に同席する際、
金融機関からよく聞かれる質問を項目ごとにご説明させていただきます。
まず今回は売上高についてです。
【ポイント】
売上高が下がっている場合、金融機関からはその理由をまず聞かれます。
これに対して、経営者としては売上高が下がった理由は聞かれなくても分析しておくべきです。
具体的には、以下の3ステップで分析していただきたいところです。
①部門別・店舗別・取引先別・商品別など分ける。
②直近3~5期のセグメント別の売上高を各期集計する。
③売上高が下がった分野と、その理由を分析する。
また、売上高が下がった理由とともに、対策について具体的に答えられるようにできればベストです。
具体的な対策については、以下の5つの視点が重要です。
①誰が(主体者)
②何を(施策)
③どうやって(手段)
④いつまでに(期限)
⑤どうなるか(効果)
【実際にあった質問】
「売上高が前期比で減少した理由は何ですか?」
(OK回答例①)
「主力取引先の一つ、○○社への売上高が、
前期3,000万円あったのが当期は2,000万円に下がってしまったのが大きな原因です。
A社自体の売上が大きく落ちているようです。
A社は今後も売上が伸びるように思えないので、新規取引先の開拓を積極的に進めます。」
(OK回答例②)
「弊社の売上高の2割を占める商品○○の売上が、
前期2,000万円から当期500万円まで下がってしまったのが大きな原因です。
○○は、前期は世の中のブームに乗って多く売れたのですが、
当期はそのブームは終わってしまいました。
新商品開発を進め、新しい商品を展開し売上の回復に努めます。」
実際に、このような回答の後、金融機関が経営再建の実現性と具体性を評価していただき、
思いもよらぬ金額の融資を受けることができた事例もあります。
(NG回答例①)
「景気が悪かったので売上が下がりました。」
→売上高が下がった理由を分析せず、景気だけのせいにしている。
(NG回答例②)
「業界が衰退しているので売上高が下がりました。どうしようもありません。」
→売上高が下がった理由を業界衰退だけのせいにしている。
また、売上高を回復させる対策を考えていない。
このような回答をされた後、金融機関の支援スタンスが消極的になることは非常に多いです。
「このまま具体的な対策を打たないままでは業績悪化に歯止めがきかず、
貸したお金が返してもらえないリスクが高い。だから、早めに返済してもらおう。
追加の融資はお断りしよう。」と見られるからです。
実際に、このようなケースを間近で見たこともありますので、
このようなケースは是非避けていただきたいところです。
次回は、売上原価・売上総利益についてご説明します。
支援部 田中徹志