前回は、資金繰り表の作成手順についてお話をさせていただきました。
ポイントを絞って簡単にご説明しましたので、イメージだけでもつかんでいただければ幸いです。
今回は、完成した資金繰り表を見る時にどこが大事なのか?
そして、金融機関の融資の審査において資金繰り表の有無が大きな分岐点になることをお話しします。
①資金繰り表を見る時のポイントは「経常収支」がプラスかマイナスか
損益計算書でいえば「経常利益」の部分にあたるものを、
資金繰り表では「経常収支」と言います。
これは、銀行借入の「元金返済」の前のお金の出入りの合計に当たります。
会社の資金繰りをチェックする際には、
この「経常収支」がプラスなのかマイナスなのかが大きなポイントになります。
もちろん、月によって季節変動もありますので、
単月の経常収支が「プラス」の時もあれば「マイナス」の時もあるのは当然です。
ただし、1年間を通して「マイナス」になっていると下記の点を疑ってみないといけません。
☞仕入過多になって在庫・材料が多くなっていないか?
☞売上は伸びているが回収サイトが長い会社が増えていないか?
☞売上回収が遅延している先がないか?
☞そもそも赤字が嵩んできていないか?
どれも会社経営にとっては見逃してはいけないポイントです。
これは、試算表では気付きにくい部分もあります。
特に、在庫は棚卸を年1回しかしていない会社が多いためです。
経常収支の「マイナス」は、企業経営のアラームだとご認識ください。
②融資審査で資金繰り表の有無で大きな差が出る
資金繰り表を作成している中小企業は少ないと言いましたが、
逆に作成している会社はいい意味で目立ちます。これは、融資審査の場面で顕著です。
☞どうして融資が必要なのか?なぜその金額が必要なのか?
☞貸したお金の返済は大丈夫なのか?
この疑問に答えられる資料は、「決算書」でも「試算表」でもなく「資金繰り表」だからです。
融資が必要になるのは、「経常収支」のマイナスが原因にありますが、
そのマイナスが一時的なものなのか?仮に慢性的なものであれば、
それをどのように改善していくのか?という疑問についても、「資金繰り表」で説明できるからです。
「資金繰り表って面倒くさいしなぁ…」と思う方も多いと思いますが、
「資金繰り表」は経営者を守るツールとなることをご理解していただけると幸いです。
支援部 田中徹志